FC2ブログ

インドネシア船員遺体海葬事件

05 17, 2020
2020年3月30日。 西太平洋上に中国の遠洋マグロ漁船の船団が航行していました。その日、デッキの上では複数の船員に囲まれるかのように赤い布で包まれた何かが担架の上に載せられていました。

それは数日前まで同じデッキ上で魚網を扱っていた船員のアリさん(24歳、インドネシア人)の遺体を包んだものでした。この光景は操業中の漁船の中で病死したとされるアリさんの海葬だったのです。

船員のひとりは長いお香に火を灯しアリさんの冥福を祈っています。 そして彼はカップに注がれた酒を周囲に振り撒き、アリさんの魂を鎮めようと務めました。

彼は周囲を取り巻く仲間の船員らの問い掛けます。
「アリさんに何か伝える言葉はありますか?」

その後、アリさんの遺体を乗せた担架は船員らによって担ぎ上げられデッキの隅まで運ばれました。 そして担架は斜めにされアリさんの遺体はするすると滑るように落ち、海中へと沈んで行ったのです。





所がこの船では昨年12月頃から、今回のアリさんを含めて3名の船員らが病死していたのです。 ひとりは19歳の男性。もうひとは24歳の男性でした。

その後、同船は韓国の釜山港に船主を向けました。 しかし漁船は釜山港の岸壁には着岸せず、沖合に停泊したままでした。




釜山港に寄港



釜山に着くと、同船に乗船していたインドネシア籍乗組員がアリさんの海葬の事実を韓国に通報したのです。
「船の中で3名の船員が死んだ。 生前彼らは” 足が腫れて痺れもとれない ”と訴えていました。 その後彼の体中に激痛が広がって行き最後には呼吸困難に陥ったのです。 中国人の船員らは中国本土から持ち込んだミネラルウォーターを飲んでいましたが、私たちインドネシア籍の船員はそれを与えてもらえず、仕方なしに海水を濾過器で濾過した水を飲んで航海と漁を続けていたのです。 仕事はきつく、酷い時は連続30時間ぶっ通しでの労働を強いられていました。 逃げるにも私たちは中国人にパスポートを取り上げられていたので逃げるに逃げられなかったのです。」

この証言は韓国の報道番組で報じられてしまいます。
「インドネシア人らは濾過した海水を飲んで不調を訴えていた。 彼らインドネシア人の船員は漁船の中で奴隷同様の扱いを受けて生活していた。」
と報道します。

そして彼らインドネシア籍船員の賃金は驚く程安いものでした。中国語の分からない彼らがサインした契約書には
「どのような事情であれ、契約途中で船を下船して去った者には賃金を大幅カットする。」
との条項が付されていたのです。 問題のインドネシア籍船員らの年収ですが、13か月間で120ドルという額面でした。 これは韓国のお金で14万8千ウォン、直接日本円に換算すれば1万3千円にも満たない金額です。(2020年5月16日の為替レートで計算)





この船員は当初別の中国漁船に乗っていました。しかしその漁船での待遇に不満を持ち、別の漁船(つまり本船)に洋上で乗り換えていたと言うのです。そしてその船が釜山港に向かったわけです。 この時同船にはインドネシア籍船員27名が乗船していました。 しかし、積み荷が違法に獲ったフカヒレだった事で釜山港の岸壁に着岸するのは危険だと判断し、沖合に停泊していたのです。

釜山に着いたのは2020年4月14日です。 その後同船の中でインドネシア籍船員が不調を訴えました。 そして彼は下船を許され釜山の病院に担ぎ込まれたのです。 しかし船員は手当の甲斐もなく4月27日に死亡します。

彼の死亡で韓国海洋警察庁は同中国遠洋マグロ漁船の捜査に乗り出す事になります。 しかしその2日後には同船が釜山の沖合から離れ公海に向かって出航し始めたのです。 この事で韓国海洋警察庁は捜査の権限を失ってしまいます。







違法なフカヒレ漁をしていた疑い



そして韓国のニュース番組では次のような報道も行います。
「問題の遠洋マグロ漁船はマグロ以外にもサメを捕獲してヒレを切断していた。 つまりフカヒレをとっていたのだ。彼らは毎日20匹~数100匹のサメを捕えてはフカヒレを集めていた。 今回の事件はその違法フカヒレ業の実態がバレるのを恐れて病死したインドネシア人の遺体を水葬にし、そのまま漁を強行していた疑いがある。」

彼らは問題の中国の遠洋マグロ漁船は13か月間に渡って鮫の違法な乱獲を行っていたと主張します。

但し中国遠洋マグロ漁船側の言い分は発表されておらず、あくまでもインドネシア籍船員の証言を元にこの事件は伝えられました。


※ 水葬と海葬

「水葬」は船員法という法律で定められた遺体の処理方法。 死亡した人間の遺体を死後24時間以上保管した後、温度(室温)などの保管状況が保管に適さないなどの理由で、その遺体に相当の重りなどを付して海中に向け葬る儀式です。 その際、本人の遺品などの保管を義務づけています。

「海葬」は無くなった遺体の遺骨を海に撒いて、亡くなった人の魂を弔う儀式です。




Posted in 中国
プロフィール

chopitonews

Author:chopitonews
海外の歴史的事件や重大事故を記録しています

最新記事